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『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』にキュン死しそうです|鈍い佐々木さんと、山田さん兼・田山さん

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最近すっかりハマっている漫画があります。地主先生の『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』、通称「ヤニすう」です。Kindleで読み始めたら止まらなくなり、いい大人が毎晩キュン死しそうになっています。

この記事には序盤の設定に関する軽いネタバレが含まれます。とはいえ物語の前提にあたる部分で、公式のあらすじやアニメのPVでも触れられている範囲にとどめています。

どんな漫画か

主人公は佐々木さん。ブラック企業に勤める45歳の課長で、いつも疲れています。そんな彼の癒やしが、たばこと、行きつけのスーパーのレジ係。

ある日、そのスーパーの裏にある喫煙所で、風変わりな女性に声をかけられる——というのが物語の始まりです。2022年に作者のSNSで発表されたあと、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)で連載が始まり、現在は8巻まで出ています。2026年7月からはTVアニメも放送中です。

「山田さん」と「田山さん」という発明

この作品の構造がとにかく上手いのです。

スーパーのレジに立っているときの彼女は、明るくて感じの良い店員「山田さん」。ところが退勤後、喫煙所に現れる彼女はロック寄りの私服にがらりと変わった「田山さん」。そして佐々木さんは、この二人が同一人物だとまったく気づいていません。

読者だけが知っている。彼女は気づいてほしくてヒントを出している。でも佐々木さんは全力で気づかない。この三層のズレが、1話ごとにきっちり効いてきます。

しかもこれ、単なるすれ違いギャグでは終わりません。同じ人が、二つの顔でひとりの人を好きになっているという状況になっているので、じれったさの純度が高いのです。読んでいるこちらは「早く気づけ」と「まだ気づくな」を同時に思うことになります。

これから読む方に、ひとつだけ小さな宿題を。彼女がチョーカーをつけているのはなぜか——これを頭の片隅に置いたまま読み進めてみてください。私は「なんでだろうなぁ」と気にしながら読んでいて、あるところで「ははん」と腑に落ちてスッキリしました。答えはあえて書きません。読んでのお楽しみにしておきます。

佐々木さんの「鈍さ」は、優しさとセットになっている

私が佐々木さんを気に入っている理由は、鈍いからではありません。鈍いのに、優しいからです。

私は勝手に「にぶす木さん」と呼んでいるのですが、彼の鈍さは無神経とは違います。細かいところによく気がつくし、人に対して雑になることがない。ただ、自分に向けられた好意にだけは徹底的に気づかない。

これはたぶん、疲れ切った中年が失いがちなものを彼が失っていない、ということなのだと思います。ブラック企業で消耗しきっているのに、コンビニでもスーパーでも、人に対する態度が荒れない。あの状態を保っている時点で、佐々木さんはけっこうすごい人です。

疲れた大人にこそ効く距離感

この作品、たばこが題材ではありますが、本題はそこではないと思っています。職場でも家でもない場所で、利害のない相手と、短い時間だけ話す——その距離感の心地よさこそが本題です。

大人になると、こういう関係が本当に減ります。同僚でも家族でも友人でもない誰かと、名前も肩書きも関係なくだらだら話す時間。この漫画が刺さる人が多いのは、たぶんそこに覚えがあるからだと思います。

そして毎回、二人はほんの少しだけ距離を詰めて別れます。派手な展開はありません。でも「今夜もあの場所で」の積み重ねが、気づけばとんでもない厚みになっている。読み終わるころには、こちらまでスーパーの裏に行きたくなっています。

スーパーの裏でヤニ吸うふたり 1巻(ビッグガンガンコミックス)
スーパーの裏でヤニ吸うふたり 1巻 まずは1巻から。私はKindleで読み始めて止まらなくなりました

電子で読むのが向いている作品でした

これは完全に個人的な話ですが、この作品は電子と相性が良いと思っています。

1話が短めで区切りが良いので、寝る前に「1話だけ」と開ける。そして高い確率で1話では終わらず、そのまま次の巻を買ってしまう。私が数日で沼にはまった原因の半分は、この「読み終わった瞬間に次が買える」という電子書籍の構造にあります。漫画のまとめ買い癖については 大人になってから大人買いした漫画たち にも書きましたが、今回もきれいに同じ道をたどりました。

スーパーの裏でヤニ吸うふたり 8巻 現時点の最新刊。1巻から続けて読むと積み重ねが効いてきます

まとめ:いい大人がキュン死しています

派手な事件は起きません。ただ、スーパーの裏で二人がたばこを吸って、少し話して、また明日、というだけです。それなのに毎回きちんと心を持っていかれます。

疲れている自覚のある大人ほど刺さる作品だと思います。私のように、いい歳をしてキュン死しそうになっている方が他にもいるはずです。

2026年7月からTVアニメも放送されています。原作の間の取り方が声と音でどう再現されるのか、原作読者としても楽しみなところです。