『21エモン』レビュー|未来のホテル跡取り少年と宇宙の話
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SF短編の熱が冷めないうちに、長編へ
先日、藤子・F・不二雄のSF短編にどハマりした話を書きましたが、その勢いのまま2026年6月、大全集版の『21エモン』1〜2巻を購入しました。短編で浴びたF先生の「すこし・ふしぎ」を、今度は長編でゆっくり味わいたくなったからです。
舞台は21世紀の東京。高層ビルが立ち並ぶ未来都市の片隅に、江戸時代から続く老舗ホテル「つづれ屋」がぽつんと残っています。その跡取り息子が主人公のエモン。そこに居候として加わるのが、イモ掘り用ロボットのゴンスケです。時代に取り残されたホテルを守る家族と、宇宙に憧れる少年。この設定だけで、もう面白そうな匂いしかしません。
1960年代に描かれた「未来」が古びていない
驚いたのは、未来都市の描写です。連載は半世紀以上前なのに、都市の風景や暮らしの道具のアイデアに「これ、今まさに実現しつつあるやつでは」と思う瞬間が何度もありました。単なる夢物語ではなく、「技術が進んだら人の暮らしと仕事はどう変わるか」まで考えて描かれているのが、F先生の先見性なのだと思います。
そして本作の影の主役が、ゴンスケです。イモ掘りロボットのくせに妙に生活力があり、給料や労働条件にうるさく、ご主人様相手でも言うことは言う。この毒のあるユーモアが最高で、私は電車の中で読むのをやめました。笑いをこらえる顔が不審だったからです。
ドラえもんとは違う「働くこと」の物語
同じF先生の未来ものでも、ドラえもんが「ひみつ道具で日常を変える」物語だとすれば、21エモンは「働くこと・家業と夢」の物語です。傾いたホテルを継ぐべきか、それとも自分の憧れを追うべきか。エモンの揺れは、そのまま大人の私たちにも刺さるテーマだと思います。
個人事業主として「家業と夢の折り合い」に日々悩んでいる身としては、笑いながら読んでいたはずが、ふと手が止まる場面が何度もありました。子ども向けの顔をして、大事なことを真ん中に置いてくる。このあたりはさすがF先生です。
まとめ:ドラえもん前夜の傑作、大人にこそ
『21エモン』は派手な作品ではありませんが、未来都市の風景、ゴンスケの毒、そして少年の進路の悩みが同居した、じわじわ効いてくる一作です。結末やその先の展開はぜひご自身で。私はまず1〜2巻を読み終えたところなので、続きの巻もこのまま揃えるつもりです。