その日はパパと2人だったきがする。
少しうとうとしていたら、ふと近くではしゃいでいた君がいないことに気がつく。
閉めたはずの扉が開いていて、目をやると君は階段を登っているところだった。
2階へ行く階段の扉が閉まっていれば、勝手に2階に行くことはないと思っていたから気にしていなかった。
焦ったパパが名前を呼んだから君は振り返ってしまった。
バランスを崩した君はそのまま階段の5段目くらいのところから頭から落ち始める。
はじめて景色がスローで流れ始めた。
気づいていたら階段にパパはダイビングしていて、なんとか頭は守ったけど、君は背中とかは打っちゃった。
何より落ちていく感覚と見たことのない景色の変わり方が怖かったね。ずっと泣いていたね。
でもまた階段を上りたがっていた君の勇気に驚くよ。まだまだちゃんと見ていないと。
お風呂でもパパは謝らなきゃいけないことがある。
お風呂に入っていた時、夏は一緒に湯船に入るけど、冬は寒いからパパが体を洗う時は君を湯船の中に入れている。
何かあるとまずいから頭を洗う時も君が溺れないかと目にシャンプーが入ろうと見張り続けてる。
もう父親の鏡。
でも油断した時があった。顔をいつもより念入りに洗って目を閉じていた。何も起きないから油断していた。
よくよく思い出すとその数秒は不自然なくらい静かだった。目を開けた時、君は溺れてもがいていた。
くの字に体が曲がり手は湯船を掻いているけど、必死の抵抗空しく顔は湯に沈んでいく。
バシャバシャと音を立てることもできず本当に静かに溺れていた。
すぐに抱き抱えて背中をさすった。
恐怖に怯えて泣き続ける君に本当に申し訳なく思った。
お風呂で君から目を離したことをとても後悔した。数分後、笑顔でお風呂で遊ぶ君の姿に救われた。
よく君は怪我をして保育園から帰ってくる。
手を繋ぎたがらずに、勝手にどっかへ行き、よく転び、よく泣く。
小さい頃から体の成長が遅く、他の子がハイハイしても仰向けに寝て天井を見ることを楽しんでいる君だから慌ただしい日々のことを気にも止めていない気がする。
でも世界は本当に危険なことがいっぱいだから心に刻まれない分がしっかり体に刻まれていく。
パパもママも危険から遠ざけようとは思わない。人生つまらなくなるから。危険と上手く生きてほしい。
今は僕らがちゃんと見ておかないと流石に小さな君の身体がボロボロになるので気をつけます。
傷と笑顔の絶えない君を守りすぎず、見守りすぎず、守らないと。
多少の怪我なら一緒に笑い飛ばそう。
今日もそろそろパパも寝ます。おやすみなさい。